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子供の頃はよく隆くんの家に遊びに行っていたけれど、
お父さんの転勤で遠くに引っ越してからは、たまに電話で話すくらい。
8年間、私は隆くんと会えなかった。
でも、私の隆くんに対する想いは変わらなかった。
ううん、どんどん強くなっていった。

だから隆くんと一緒に暮らせると知ったとき、私は本当に嬉しかった。
前の日は興奮で眠れなかったくらい。
8年ぶりに会った隆くんは、私の記憶している隆くんのままだった。

「え……そうなの? 隆くん、恋人いないの? 本当に?」

恋人がいないと知ったとき、私がどれだけほっとしたか、
きっと隆くんは知らない。
芹奈さんという恋敵を知ったとき私がどれだけショックだったか、
きっと隆くんは知らない。
初めてキスをしたとき、私の胸がどれだけドキドキしていたか、
きっと隆くんは知らない。

そして、私がどれだけあの日の約束を大切にしているか、
きっと隆くんは知らない。

だから今日も私は寝る前に、隣の部屋で眠る隆くんにそっと囁く。

「私は……あの約束、まだ信じてるよ」

いつの日か、私の想いが隆くんに届く日を夢見ながら。
これから見る夢が現実になりますようにと願いながら、私は目を瞑る。


こんなふうに、私の新生活は始まりました。